長山靖生偽史冒険世界」(ちくま文庫


源義経は後にチンギスハンになった」「日本の天皇が地球を作った」「日本人はユダヤ人の子孫」
このような偽者の歴史に関する話題はいまだに事欠かない。この本はそうした歴史について詳しく分析したものである。
もちろん、偽者の歴史を知りたいだけであれば、トンデモ本なり、と学会の本なりを読めばいい。ここではそれだけではなく、どうして人はそうした歴史を作ってしまうのか、そうした歴史を信じ込んでしまうのかと言うところを掘り下げて紹介している。


基本的には読んでいて楽しい本である。外国語と日本語との類似点をもとに日本文化が外国に移ったのだと断言してしまう姿勢などは、ノストラダムス研究者のめちゃくちゃな解釈を思い出させる。それだけに限らず、登場する説が面白い。
一押しは、


「トマスモア『ユウトピア国』は我が日本津軽
だろうか。


なぜに津軽
樺太でもなく、琉球でもなく、「津軽」がユートピア。分からん、本当に分からん。当時にしてみればまだまだ津軽は良く分かっていない土地だったからと言うことなのだろうが、もっと遠い地にユートピアを夢見ておいたほうが幸福であるような気はする。


ただ、こうした行為をただ笑っているだけでは終わらない。歴史の捏造は大なり小なり残っているわけであるし、政治的な問題をおくとしてもいまだに理想的な歴史と人生を求めてしまう心根は残っているわけであるし。