赤瀬川原平藤森照信南伸坊路上観察学入門」(ちくま文庫/S)


「入門」と銘打ってはいるが、路上観察の方法を事細かに紹介したような本ではない。
しかし、路上観察の面白さがにじみ出でくるような本である。
内容はといえば、まず路上観察学、考現学の歴史を紐解き、それから実際にどのように調査が行われているのかを実例を挙げて紹介している。
読んでいると、路上で見かけても普段は気にも留めないような、マンホールやゴミ、道行く野良犬などをつぶさに観察するという楽しみが伝わってくる。トマソンを求めて町中を散歩するなどのエピソードを写真つきで読んでいるだけでも面白い。単純に建築物として、収集物としての面白さに加え、「ここまでやるか」という面白さがある。ヨーロッパに行ってホテルの部屋の内装を事細かにチェックしている資料など、「よくぞここまで」と思わずに居られない。
寄稿者もバラエティに富んでおり、荒俣宏博物学の視点から文章を寄せている。そこも特徴の一つであろう。


読後はついつい視野が広まってしまう本だ。


横山泰行「ドラえもん学」(PHP新書/S)


いわずと知れたドラえもん学の専門家による著書。
ドラえもん」作品の内容について掘り下げた本ではない。それなら「野比家の真実」や「ド・ラ・カルト」を読むべきだろう。
どちらかといえば、「ドラえもん」という作品がいかにして人口に膾炙してきたのか、どのように世界に広がっていったのかを紹介した本である。
後半の三分の一ほどで「あらすじでよむ『ドラえもん』」として、有名な作品のあらすじが紹介されている。ファンにしてみれば余計なお世話のような気がしないでもないが、私などは最近コミックスを読んでいないから、懐かしく読むことが出来た。
久しぶりに大長編のビデオを借りてこようかねえ。