渡部昇一「知的生活の方法」(講談社現代新書


学生時代に苦学しながら本を貪り読んだといった著者自身のエピソードや、カントら高名な学者のエピソードをもとに、どういう生活をすることが知的生活に必要なのかを論じている。
結局のところ、知的生活には読書が必要不可欠ということのようである。さらに、冒頭でハムレットの「己に対して忠実なれ」という言葉を引用しているところも注目に値する。著者はこの言葉を、「自分をごまかさない」という意味に解釈しているわけだが、なるほど自分の「知的でない」生活を振り返ってみれば、浅い知識で自分を誤魔化していることが多いことに気付く。
さらには自分の読書経験の浅さにも恥じ入った次第である。学者になるための読書量と単に知的生活を送るために必要な読書量を同じと考えるべきではないかもしれないが、少なくとも自分の読書は、そのいずれと比較してもあまりに底が浅い。水木しげるが取材のため、25年がかりで1億枚の死体等の写真を収集していたという話を読むに至っては、知的でない一つのジャンルですら極めることの出来ない現状を羞じる他無い。いやはや。