三浦展下流社会」(光文社新書


現代社会で上流と下流の二極分割が進み、「下流」化している人が増加している云々といった論旨と捉えればいいのだろうか。その上で、そうした「下流」化が子供に及ぼす影響などについて憂慮している。ただ注意が要るのは、「下流」というものが「下層」とは異なり、生きるに困るわけではないけれども生活は「下」であることを意味しているという点だ。
全体として意識調査の分析がメインなので、ちょっと物足りない感もある。そもそも「下流社会」と銘打っているけれども独自の「下流」の定義があるわけではなくて、意識調査で「自分の生活が下だ」と考えている人についてそれ以外の人と対比しているに過ぎない。また、データの分析の根拠が筆者の経験に多くを頼っており、少数の聞き取り調査のデータはあるにしても「本当に下流の人々がこう思って行動しているのか」というところが曖昧。筆者自身もこれらの分析が「仮説」であるということは明記しているので、あくまで問題提起の書と見るべきだろう。大規模な聞き取り調査なんてそう簡単に出来るものでもあるまいし、「ニート」同様にブームになれば調べてみようと思う社会学者も増えるだろうし、これからに期待すべきか。


とはいえ、「下流」というなかなか意識しないカテゴリーについて分析しているのは面白い。そして頭が痛い。振り返ってみれば、どう見ても私の生活は「下流」一直線なんだよなぁ……冒頭にある「下流度」チェックで12項目中9つも○が付いてしまった。どうしたものだか。
で、解決策として「子供への悪影響を阻止する方法」は提言しているのに「下流的生活を送る人々」がどうすべきかについては触れられていないんだよね。下流の人間としてはそこにふれておいて欲しいと思うのだが。冒頭のチェック事項の真逆をいけばいいのか。