全体の流れはこれまでと変わらず、何か一つ変わったシステムを導入している国をキノが訪れて、面倒なことに巻き込まれるなどしながら三日間過ごすという流れ。で、そのシステムというのがストーリーの肝なのだけれども、そこが若干辛め。
個別の話について言うなら、「橋の国」と「塔の国」あたりが好き。どうしてこう、人間という奴は傍から見ると無駄にしか見えないことに力を注いでしまうんだろうね。或いは、立場が変われば全ての「正当な目的」は無駄なものに映るのか。
そのあたりはモンドムービーと繋がるよなぁ。他国の変わった風習を見て「なんだコイツら?」と思うというのは、結局のところ自分の視野狭窄に過ぎない。そのことは頭では分かっている。とはいえ、やはり自分の育ってきた「文化」が標準としか見ることが出来ないのも止むを得ない。何らかの「基準」に縋っておかなければ、価値観の濁流に飲み込まれてしまって平静を得ることは出来ないから。だからこそ一種の「開き直り」に似た感情が生じ、それゆえに「異文化」を面白半分で取り上げることも出来るわけで。
それを考えれば、私の視野の狭さは相当なものがあるから、一度旅にでも出ようかなとは思う。「開き直り」過ぎているし。



「ビギナーズクラシックス」のほうを購入した。通常版は注釈をいちいちチェックしていくのが面倒なので、原文と訳文が並んでいるこちらのほうが私にとっては読みやすい。
さて、本書は言うまでも無く松尾芭蕉旅行記。通常の句集とは違って旅行記の中に俳句が収められているという体裁だから、俳句が読まれた場面を想像することは容易く、それゆえ俳句そのものの良さも伝わってくる。
俳句を読むことは出来ないけれども、一度で良いからこういう旅をしてみたいもので。