• 大岡昇平「事件」(新潮社/S) ★★★★★

のどかな村で起こった男女間の縺れによる殺人事件の裁判について、事件が発生してから判決が確定するまでを克明に描いた小説。
裁判の手順が順を追って細かく説明されているので、法廷モノとして面白い。判例集を読むのが好きな御人には興味深く読めるはず。また、裁判の進行に当たっての原則なり規則なりが細かく説明されているあたりは作者の取材の緻密さを感じさせる(法学部ベタなのかしらん)。ただ、40年前の小説なので、今となっては若干古くなったところがあるのかもしれない(確認はしていないけれども)。
事件そのものは急展開があるとはいえ、刑事ドラマにありそうな派手な展開があるというわけではないので、そういった意味では物足りない感もある。現実の話としては、そんなものなのだろうが。

いい年してスニーカー文庫なんて、と思いはするけれども、読んでしまうのは何とやら。
本作は「2005年 このライトノベルがすごい!」で1位になった「涼宮」シリーズの一作目。第8回スニーカー大賞受賞作だそうな。
スニーカー大賞を受賞した作品は他に「ジェノサイド・エンジェル」と「ラグナロク」がある。大賞というからには面白いということについては折り紙つきなのだろう。ただ、私の場合「ラグナロク」は途中で投げたから、折り紙を信じる気になれないというか何というか……。何だかんだ言ってもこの年だし、ジュブナイルを純粋に楽しめなくなるのは仕方ないというか、当然というか。
で、本作であるが、エンターテインメントとしては面白い。ベタっぽい要素が無いとはお世辞にもいえないけれども、むしろ、そこを狙っているのだろう。いや、しかし、だからといって、あのオチは流石に………
とりあえず、イラストに★一つ。