そろそろり。

[映画]
田園に死す
監督:寺山修司

一つ積んでは父のため 
二つ積んでは母のため 
三つ積んでは国のため
四つ積んでは何のため   

ようやく借りてきた。まあ、これもいつものことだけれども、もう少し早く知っていればとは思う。
ストーリーは分かったような分からないような。
映画監督が少年の頃の事を映画化しようとするのだが、映画に描かれているのは美化された過去であって、実際にはドロドロしたものが存在していた。一目ぼれした女と駆け落ちしようとしてみたり、親殺しのパラドクスを証明しようとして母親を殺そうとするが殺せなかったり。そういった大筋があって、サーカス団の話とか、イタコの口寄せとか、赤子の間引きとか、赤い櫛の挿話とか、そういった印象的なシーンがいろいろと登場する。
個人的にはストーリーよりも映像の方が気になるところである。なにせ、ワンカットごとに見たことのない世界が描かれているのだもの。意味が分からないといえばそうなのだが、そこに妙な調和があるから面白い。机下で老婆の足を舐めている裸の男にせよ、川を流れてくる雛壇にせよ、布キレをまとって狂ったように踊る女にせよ、どう考えても存在するはずが無いのだが、あたかも自然に存在しているかのように見えてしまうところに怖いものがある。
ところで、我が子を川に流す母親の背後に流れる歌が、「姉が血を吐く 妹が火吐く 謎の暗闇瓶を吐く〜」という歌詞なのだけれども、これは「トミノの地獄」をヒントにしているのかな。

姉は血を吐く、妹は火吐く、
可愛いトミノは宝玉(たま)を吐く。
ひとり地獄に落ちゆくトミノ
地獄くらやみ花も無き。


西条八十トミノの地獄」